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推定相続人からの遺言作成の依頼

推定相続人の依頼と遺言者の意思

税理士・行政書士をしていると、年に2~3度、顧問先以外の方から遺言について相談を受けることがある。

 

その中に推定相続人の方からの相談もある。この場合がなかなか厄介なことが多い。

 

まず、当然ながら遺言は遺言する方の意思を残すためのものであって、推定相続人(例えば子)の意思を書き示すためのものではない。

 

推定相続人からの依頼の場合、大抵、自分に有利な内容の遺言を作って欲しいということになる。遺言者(例えば親)はその推定相続人(例えば子)と同居していて、子が親の生活の雑務をしているような場合、親としては子の機嫌を損ねて、雑務をしてくれなくなることを恐れるので、子の言うことを聞いて、その子に有利な内容を書いてもいいよということになる。

 

人間というのは年をとると、体も弱くなるし、心細くもなる。

 

こういう遺言は、相続が実際発生した後、争いの原因となる。たとえ遺留分を考え作成したとしても、折角、仲良くしていた兄弟姉妹が、大変残念なことに、以後音信不通、顔も見たくないということになる。また、うまくやったはずの子も江戸の仇を長崎で討たれるということにもなりかねない。

 

相続で一番大事なことは、相続人がみな仲良くし、他の利害関係者(例えば銀行や税務署)に負けないようにタッグを組むことにある。そして仲良く親戚づきあいしていけるようにすることだ。被相続人(例えば親)もそう願ったはずだ。

 

一方、遺言者が真に自分の意志で作った遺言の場合、たとえ遺留分を侵害する遺言であったとしても、実際相続が発生したとき、不利な扱いをされた相続人も減殺請求をしない場合が多いように思う。

 

なぜか、不利に扱われた相続人も遺言の内容を知らされたとき、遺言者がなぜそんな内容の遺言を残したか、胸に手をあてて考えれば推測がつくものだ。また、遺言者も相続人のことを深く考えて遺言を作成している。そこで不利に扱われた相続人も受け入れてくれる。

 

行政書士としては遺言者の意思を大切にしたい。