相互扶養義務
民法第877条1項は次のように規定している。
民法第877条1項
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。」
一方、相続税法第21条の3第①項第2号は次のように規定している。
「次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
2.扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のう
ち通常必要と認められるもの。」
また、これに関する通達では次のように記載されている。なお通達は、税務当局の解釈を表明したものであって、法律ではない。したがって、憲法の規定により国民も同じ解釈をしないといけないというものではない。しかし、相手の考え方を知ることは重要である。
相続税法基本通達21の3‐3「生活費の意義」
「法第21条の3第1項第2号に規定する「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必
要な費用(教育費を除く。)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害
賠償金に補てんされる部分の金額を除く。)を含むものとして取り扱うものとする。」
裁決例では、有料老人ホームの入居金について、償却計算するものは生活費として認めた一方、終身の利用権に該当するものは生活費に認めなかったという例が公表されている。
相続税法基本通達21の3‐4「教育費の意義」
「法第21条の3第1項第2号に規定する「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められ
る学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。」
相続税法基本通達21の3‐5「生活費及び教育費の取扱い」
「法第21条の3第1項第2号に規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の
課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために
贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財
産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当
該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められる以外のものとして取り扱うものとす
る。」
やや、法律の書きぶりより生活費及び教育費に修飾語を付け、狭くした感じがする。つまり、生活としてもらっても、使わないとだめで、残った部分は必要としなかったという取り扱いを当局としてはするということだ。
相続税法基本通達21の3‐6「生活費等で通常必要と認められるもの」
「法第21条の3第1項第2号に規定する「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶
養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとす
る。」
孫が私学の医学部で医師を目指す場合、授業料が年間1千万円は必要と言われるが、これを両親が負担するより、祖父祖母が負担したほうが、相続税的には有利ということだ。祖父祖母よりも曾祖父曾祖母が負担したほうがさらに有利だが…。
年間1千500万円生活費と教育費で必要とすると、8年間で1億2千万円相続財産を減らせるということだ。
一方、甥が同様、医学部で医師を目指すとしてもこれを伯父が負担してあげることは、条文上認められない。
相続税法基本通達21の3‐7「生活費等に充てるために財産の名義変更があった場合」
「財産の果実だけを生活費又は教育費に充てるために財産の名義変更があったような場合には、そ
の名義変更のときにその利益を受ける者が当該財産を贈与によって取得したものとして取り扱うも
のとする。」