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退職金を使った節税

退職金への課税はやさしい。

 小さな会社の社長様の相続税対策として、生命保険を使ったものは皆さまよくご存じだ。生命保険会社の広告宣伝能力はすごい。

 

 要は、相続人2人の場合、預金で残せばそのまま課税価格に算入されるが、生命保険で残せば500万円×2人=1,000万円まで控除して、なお残った金額が課税価格に算入される。

 つまり、1,200万円を預金で残した場合、1,200万円がいったん課税価格に算入されるが、生命保険なら1,000引くので、200万円が課税価格に算入されるという寸法だ。

 

 一方、退職金については、ご存じない方も多い。

 

 退職金についても、500万円×法定相続人の数だけ控除される仕組みは同様だ。

 

 違いは、次の点だ。

  1. 退職金がその社長様が経営している会社でも損金算入されること。
  2. その社長様が所有している小さな会社の株式を評価する際、その退職金を経費に落としたものとして株式を評価すること。
  3. 退職金を誰に支払うかは株主総会マターであること。(生命保険金は生命保険契約で受取人が決まる。)

 つまり、生命保険金より退職金のほうが、節税効果が広範囲に及ぶ。

 

 上記だけの条件なら、その社長様の退職金は株式の評価が最も小さくなるところまでたくさん出せば、税務上有利になるという計算だが、そうはいかない。

 

 法人税法上、各事業年度の所得の計算上、役員に対する退職金のうち不相当に高額な部分の金額は損金不算入とする旨の規定があるからだ。

 

 そこで、不相当に高額な部分とは何かということが問題になる。明文の規定がないため、実務上また判例上どう扱うかということになる。

 一般的には功績倍率法と言われる計算方法がとられる。これは社長様の最後の月額報酬額に勤続年数と功績倍率を連乗するという計算方法である。

 つまり最後の月額報酬×勤続年数×功績倍率。功績倍率は事案ごとに変わるが、一応の目安として実務上、社長の場合3から3.5ならある程度妥当とされている。

 例えば、社長の最後の報酬が200万円で勤続年数が65年功績倍率が3.5であるとすると実に200万円×65年×3.5=4億5千500万円まで損金算入可能という計算だ。 

 もし、税務調査で問題になれば、その社長がいかに会社に貢献したかを説明できるかがポイントとなる。

 

 上記のことを前提とすると、社長の給与をいくらにするかということは、特によく儲かっている会社では、相続税も法人税も関係する複雑な問題となるが、あまり安すぎるのは具合が悪いということになる。

 

 また、このような計算方法が、社長が退任できない(世代交代が起きない。)理由になっているかもしれない。

 

 変な話だが、最後の最後の報酬はやや高めのほうが、相続人としては助かる。