民法上の相続財産と相続税法上の相続財産の相違
遺産分割協議書は、名義変更のために使われる場合と税務署に提出する場合で記載する財産の内容が変わる。
当たり前のことだが、銀行預金の名義変更をしているのに、不動産のことを説明しても意味がない。そこで、銀行に提出する遺産分割協議書には、銀行に関係のある財産と債務についての部分の記載があれば足ることになる。通常は、相続手続依頼書という様式が各銀行に用意されているので、それに記載することになる。
同様、通常、法務局に提出する遺産分割協議書には不動産のことだけを、陸運局に提出する遺産分割協議書には車のことだけを、ゴルフ場に提出する遺産分割協議書には会員権をだれが相続したかを記載すれば足りる。
しかし、税務署に提出する遺産分割協議書には、すべての財産について記載しないと申告書との整合性がとれない。また、債務についてもすべて記載しないと、同様申告書との整合性がとれない。
そこで問題になるのは、生命保険金、退職金、生命保険に関する権利、お葬式の費用だ。
私の場合、生命保険金、退職金、生命保険契約に関する権利など民法上の相続財産ではないが、相続税法の規定で相続税の計算には含まれるいわゆるみなし相続財産は、遺産分割協議書には記載しない。遺産分割協議の協議対象になる財産ではなく、保険契約あるいは株主総会で決定される事項だからである。
一方、葬式費用については、被相続人が残した債務ではないが、相続税の申告上、控除できるので、遺産分割協議書に記載して、税務署に提出している。厳密には遺産分割協議の対象ではないが、ほかにわざわざ覚書的なものを作るのが面倒だからだ。
保険契約なら契約書があり総会の決議なら議事録があるが、葬式費用をだれが負担するかをわざわざ決定する契約書を作成するのが面倒だが、債務・葬式費用控除を適用させ、その証拠を税務署に提出するためだ。