江戸の仇を長崎で討つ
これは、例えばの話です。
例えば、被相続人が父、相続人が長男、次男、三男、四男で、相続財産が被相続人の居宅と事業会社の発行済株式の全部だけだったとする。
父は事業会社の代表取締役会長、長男が代表取締役社長、次男が専務取締役、三男が常務取締役、四男が監査役を務めていたとする。
居宅の評価額は9000万円、事業会社の株式の評価額は1億円であったとする。
遺言書があり、居宅は長男に相続させ、そのほかの財産は4等分するようにという内容だったとする。
ここで、相続分が少なかった次男・三男・四男と長男との間に相続をめぐる争いが勃発したとする。
遺言書の真偽からいろいろのことが問題になったが、結局遺言は真正なものであって、遺留分も侵害されていないということになった。そして遺言通りに遺産が分割された。
しかし、事業会社での力関係は一変することになる。次男・三男・四男が組めば発行済株式総数の4分の3になり、長男は代表取締役社長を解任、父の退職金は支払われたが、これも株主総会の決議事項なので、退職金の受取人は次男・三男・四男のみ、代表取締役社長の退職金は支払われないことになった。
さすがにここまでやれば、代表取締役の退職金と任期満了までの報酬ぐらいは長男がとれるかもしれない。
しかし、家族に生じた亀裂を修復するのはかなり難しいと推測する。
やっぱり遺言を残す際にはよく考えて、遺言を残す者にとって何が大事なことなのか?をはっきりさせないといけない。相続人皆が仲良くできることだろうと思うが…。