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従業員に商品を盗まれた上、さらに税金を払わされた事例

裁決例 従業員による商品窃取に係る損害賠償請求権の益金算入を認めた事例

 令和元年5月16日裁決(裁決事例集No.115)

 

 本事例は農業機械器具の販売等を目的とする会社において、従業員が商品を窃盗し、インターネットオークションで販売の上代金を自分のものにした事案において、会社の従業員に対する損害賠償請求権を益金に算入すべきであるとした事例である。

 

 一方、税務署の課した重加算税、青色申告の取消処分、青色申告処分取消に伴う税額控除の否認等は、国税不服審判所によって取り消された。また、この損害賠償請求権は消費税法上課税売上に該当しない旨の裁決がなされた。

 

 つまり、税務署も調査において、ふっかけることがあるということだ。一般的に税務署の言っていることの方が、理屈がある場合は多い。しかし、税務署も法外な処分をすることがあるということは納税者として知っておくべきことだと思う。

 

 私の経験した事例では、会社の商品を買取業者に下取させ、その代金で得意先の店長を接待したという事件を経験したことがあった。

 

 帳面上はその商品は得意先が買ったことになっていて、代金も支払われている。支払われた代金は売上計上されているので、帳面上は問題ないように見えるのだ。しかし、実際には商品は得意先には納品されず、下取業者に流れていた。つまり、納品していない商品の代金を得意先に請求していたということだ。ここが会社の弱み。

 

 税務署の言い分は下取業者の買取代金が売上計上されていないので、売上計上してほしいというものだった。

 

 私としては、帳面上その商品の売上代金はすでに売上計上されているので、下取業者の下取代金を売上計上してしまうと、1回の仕入れに対して2回の売上が計上されてしまい、いわゆる2重課税になるので、前の売上を取り消させてほしいというものだった。

 

 社長は、そういう行為が行われていたことは知らなかったが、世間にこのことがばれると会社のイメージが悪くなるので、2重の売上計上を飲むというものだった。

 

 結局、税務署によって社長は知っていたという調書が作成され、重加算税も課せられたが、世間にばれるということはなかった。

 

 税務署もだいぶ無理筋な修正方法を要求することがあるということだ。

 

 なんだかすっきりしない気持ちになる。