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特別償却がお好きな社長

特別償却と特別控除の損得

 特別償却と特別控除が選択できる場合通常特別控除をお勧めする。税理士的には常識だと思う。

 

 例えば税率が3割で特別償却前の課税標準額が300万円、特別償却も特別控除も選択できる機械の取得価額が170万円で特別償却の償却率が100%、特別控除の率が7%(ただし、税額の20%を上限とする。)、普通償却額が10万円という場合機械取得初年度の税額の計算は以下の通りとなる。

 

 特別償却の場合

 (300万円‐170万円)×30%=39万円

 

 特別控除の場合

 (300万円‐10万円)×30%‐※170万円×7%=約75万円

 ※170万円×7%<(300万円‐10万円)×30%×20%

 

 取得初年度は圧倒的に特別償却が有利になる。

 

 しかし、その機械の耐用年数が5年であるとし、そのほかの条件は同様であるとすると取得後5年分の税額総額の計算は以下の通りとなる。

 

 特別償却の場合

 (300万円×5年-170万円)×30%=399万円

 

 特別控除の場合

 (300万円×5年‐170万円)×30%‐※170万円×7%=約387万円

 

 なので、特別控除の方が有利になるが金額は特別控除の約12万円である。

 

 私は上記のことを社長に説明するが、社長は特別償却を選ぶことがある。理由は来年以後のことは分からいからというものだ。

 

 確かに商売なので翌年以後の営業状態がどうなるかということは予測がつかない面がある。しかし20年間一度も赤字の決算を組んだことのない社長にしてそういう言い分だ。

 

 考えるに上記の計算が複雑であることまた中小零細企業では本当に来期の営業状況が予測不能であるほどに経営が不安定なものであることが原因であるように思う。