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マンションオーナーと税務当局の仁義なき戦い1

消費税における大家さんの租税回避行為と税務当局の防止策

  租税法律主義、個人の幸福追求権あるいは私有財産制を強調する立場から 見るとマンションオーナーと税務当局との消費税をめぐる戦いは興味深い。

 

 マンションオーナーがマンションを建築してもそのマンションが居住用の場合、基本的にはそのマンションの建築代金に含まれる消費税は控除できない。しかし、自販機スキームと言われるものが現れ、マンション代金に含まれる消費税を控除する方法をマンションオーナーは編み出した。

 

 自販機スキームは簡単に言うとマンションオーナーが新設法人を設立しあるいは賃貸業を開業する際、資本金を1千万円以上としあるいは課税事業者を選択し、1期目にマンションを購入するが賃貸料を発生させずにマンションのわきに自動販売機を設置することによって、課税売上割合を100%にして、マンションに係る消費税額の還付を受けるという仕組みだ。

 

 私が初めてこのやり方を知ったとき既に法律は改正されていたがなんて賢いと思った。まさにダーウィンの法則っぽいと感心した。

 

 調整対象固定資産の規定は、消費税創設時から規定されていたように思う。税務当局の目論見としては、1期目に還付しても、居住用マンションの賃貸ならば、課税売上割合は基本的に0%に近づくので、マンションにかかる消費税は3期目に、調整の対象になり、ある程度取り戻せるはずだった。

 

 しかし、マンションオーナーは1期目に簡易課税課税制度選択届出書を税務署に提出することによって回避した。また第3期目は免税業者になるようにすることも比較的容易だ。

 

 そこで、税務当局は消費税を改正し、課税事業者を選択した場合あるいは新たに設立された法人が課税事業者に初めてなった事業年度と次の事業年度に調整対象固定資産を取得し、原則課税で申告した場合、第3事業年度も原則課税で申告しなければいけないという改正を行った。これが平成22年改正だ。改正の根拠は公平性の原則だと想像する。

 

 これに対しマンションオーナーは新手の作戦を次々生み出すのだが、その歴史はまたの機会に触れることにする。