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医療法人に貸している診療所の敷地について嫁が代表取締役を務める会社に譲渡し賃料を払おうと思いますがいかがですか?

医療法人のMS法人を使った節税

顧問先の理事長先生(以下先生という。)「今般、嫁を代表取締役とする新会社を設立し、診療所の敷地を新会社に譲渡し、地代を新会社に支払おうと思いますがいかがでしょうか?」

 

私:「確か、診療所の土地は先生のお父様が、医療法人に貸してられた土地ですよね。」

 

先生:「そうです。」

 

私:「先生が3年前にお父様から相続によって取得された土地ですよね。」

 

先生:「そうです。」

 

私:「医療法人設立認可申請の際には、お父様と医療法人の賃貸借契約書および設立総会議事録を作成させていただきました。(医療法46条の6の4)また、相続の際には遺産分割協議書、先生と医療法人の賃貸借契約書及び理事会議事録を作成させていただきました。また相続税の申告も代理させていただきました。その節はありがとうございました。」

 

私:「まず、先生に譲渡所得税がかかりますね。大丈夫ですか?」

 

先生:「今年は随分地価がさがったので、そのこともあって考えています。新谷さんに譲渡金額等考えてもらおうと思っています。」

 

私:「考えてみます。」

 

私:「ところで先生の医療法人の役員の構成は、理事長先生と奥さまと息子様が理事でいらっしゃますが、今回設立される会社の役員はどうされるおつもりです?」

 

先生:「私が出資金の100%を出し、妻を代表取締役にしようと思います。一人法人の場合、利益相反取引にならないと聞きましたが…?」

 

私:「なるほど、しかし一人法人が利益相反取引にならないとする判例は、その取締役以外に損害を被る人がいない場合です。今回の場合、奥様が代表と務められる会社が医療法人に損害を与える可能性があります。先生の法人は出資持分有の法人ですし…。」

 

先生:「では、どういうことになりますか?」

 

私:「医療法人の側ではやはり医療法46条の6の4に沿って、理事会決議が必要です。」

 

私:「また、税務上は新会社が同族会社になりますので、その規定を適用される可能性があります。可能性はごくわずかですが。」

 

私:「また、奥さまは小規模企業共済に入れます。どうせなら、先生も新会社の役員になられて小規模企業共済への加入を検討されてはいかがですか?ただし、そうなると株式会社側でも利益相反取引になるかどうかという問題が出てきますが。微妙ですね。新会社でご損をなされるのは究極的には先生自身なので。まぁ相場より安ければ医療法人には損はないわけですから府庁も指導することは難しいのではないでしょうか?多分新会社側では先生のご家族以外利害関係者はないでしょうし。」

 

先生:「賃料の設定についても新谷さんに考えていただけますか?」

 

私:「承知いたしました。」

 

私:「新会社側では倒産防止共済も加入できますね。医療法人では小規模企業共済も倒産防止共済も加入できませんものね。こんなところではないですか?」

 

先生:「ありがとうございました」

 

私:「いえ、こちらこそ。」

 

私:「ごめんなさい。あと一つ思いついたので申し上げておきます。社会保険についてですが、奥様は医療法人で厚生年金また健康保険は医師国保でしたね。新会社でも報酬を支払われる場合社会保険の適用ということになり、社会保険料の負担が医療法人と新会社の両方で発生すると思われますので、念のため申し添えます。」