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前払金℀と前払費用℀の使い分けについて

費用の前払いを前払費用勘定で処理するわけではない。

 中小企業にお邪魔して帳面を閲覧していると前払費用℀の使い方が論理的ではない経理担当者が時々おられるので注意を促す。

 

 間違いの要点は、費用の前払いをした場合に前払費用℀で処理するわけではないというわけだ。

 

 前述したように企業会計原則上「前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに時期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。」としている。

 

 また、会計学辞典では「前払金は通常の取引に基づく商品、原材料、貯蔵品等の購入や製品、部品の外注加工等に関連して、取引を確実にすることを目的に財の納入に先立って支払われる手付金を処理する勘定である。これはまた前払金℀とも呼ばれる。なお、設備その他の固定資産の建設のために支払った前渡金は、建設仮勘定で処理し、前渡金勘定とは区別する。前渡金は仕入先に対する債権を示すものであるが、現金で回収されるのではなく、原則として棚卸資産として回収されるところに特徴がある。したがって前渡金を支払ったときは、前渡金勘定の借方に支出金額を記帳し、後日、当該商品や原材料等の受入が行われたときに、前渡金勘定残高を適当な資産勘定に振り替える。また、貸借対照表への表示については企業会計原則注解(注16)は、当該企業の主たる営業取引により発生した債権である前渡金は、流動資産に属するものとしている。(中條祐介先生)」としている。

 

 私なりに上記の定義を解釈させていただくと「前払費用は、決算日までに支払を済ませたが決算までに継続的役務(借家、金銭消費貸、保証、保険なども含む。以下同じ。)提供が期間的に完了していない(役務が一部提供されている。)場合にその完了していない部分に相当する前払いした対価のこと」だ。

 

 例えば決算日が3月20日の会社が、月末〆の携帯代を前払いした場合、3月21日から3月31日までの携帯代のことである。このような例はほとんどないと考えられるので、前払費用℀が実務上使われることはあまりない。

 

 一方、中條祐介先生の前払金の定義は前払金は通常の営業活動内で生じるように読めるが、あくまでも中條祐介先生が書かれているように、原則的な話だ。私は前払金を以下のように定義したい。「財や役務(借家、金銭消費貸、保証、保険なども含む。以下同じ。)に対する前払いした対価で、財であれば引渡しを、役務であればその一部の提供も、していない場合その対価。」

 

 たとえば、車の購入の際の手付け、家賃や利息の前払いなどなど。

 

 つまり、役務についてその一部が提供されていれば前払費用、全く役務が提供される前なら前払金ということだ。財についての前払費用はない。

 

 企業会計原則の文章の「一定の契約に従い」という言葉は不要であると考える。なぜなら一定の契約に従わない役務提供は存在しないからである。財の引渡しか役務の提供で区別すれば済む話だ。