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不動産賃貸業における5棟10室基準について

不動産賃貸業における5棟10室基準について

不動産賃貸業における65万円控除の「5棟10室基準」について

 まず、表題の件を考えるにあたって、租税法上重要な条文は租税特別措置法25条の2③項である。曰く「青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている個人で不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営むもの」が65万円控除の要件とされている。

 ここで事業を営むものの解釈としていわゆる「5棟10室基準」が考えられたのである。

 しかし、私は「事業を営むもの」を文理のままに解釈すれば、不動産賃貸業のことであると読むのが普通の日本語であると考えている。

 それを不動産賃貸業者の中に事業として営んでいるものと事業として営んでいないものがあるという風には読めないのではないかと考える。

 不動産所得を生ずべき事業=不動産賃貸業と読むのが普通の日本語の解釈のように思う。

 もし、税務当局が主張するように不動産賃貸業の中に、事業として営むものと事業として営まないものがあるとすれば、すくなくとも法の文言は「事業を営むもの」を「事業として営むもの」としなければ日本語として通じないように思う。

 しかし、税務当局はそのようには考えないのであるから、いやいやながら「5棟10室基準」に付き合うことにする。

 「5棟10室基準」は所得税法基本通達26‐9で通知されているが、通達の文書は以下のとおりである。

〈所得税法基本通達26‐9〉

建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。

(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

 

 租税特別措置法25条の2③項では「事業を営むもの」となっているところ通達では「事業として営むもの」と言い換えられている。租税法の性質が財産権の侵害規定であることからすれば、このような言い換えは厳に慎むべきではないか。

 

 次に事業として行っているかどうかの判定はいわゆる実質基準が原則であると通達も言っている。不動産賃貸業は事業である以上、実質基準で判定すれば事業でない不動産賃貸業はないのではないか。

 

 反証があればたとえ5棟10室基準を満たしたとしても、65万円控除が受けられない場合があると自ら通知している。もはや意味不明である。なんのための解釈か訳が分からない。

 

 「おおむね」という言葉も意味をぼやけさせてしまう。納税者の予見可能性から言って問題である。

 

 また、この通達では5棟10室基準に満たない不動産賃貸業であっても65万円控除を一律に認めないとも書かれていない。

 

 私の立場から言えばそらそうでしょ。だって不動産賃貸業は事業なのだからと言うほかない。